ダス・ゲマイネ【電子書籍】[ 太宰治 ]
<p>「恋をしたのだ。
そんなことは、全くはじめてであった。
それより以前には、私の左の横顔だけを見せつけ、私のおとこを売ろうとあせり、相手が一分間でもためらったが最後、たちまち私はきりきり舞いをはじめて、疾風のごとく逃げ失せる。
けれども私は、そのころすべてにだらしなくなっていて、ほとんど私の身にくっついてしまったかのようにも思われていたその賢明な、怪我の少い身構えの法をさえ持ち堪えることができず、謂わば手放しで、節度のない恋をした。
好きなのだから仕様がないという嗄がれた呟きが、私の思想の全部であった。
二十五歳。
私はいま生れた。
生きている。
生き、切る。
私はほんとうだ。
好きなのだから仕様がない。
しかしながら私は、はじめから歓迎されなかったようである。
無理心中という古くさい概念を、そろそろとからだで了解しかけて来た矢先、私は手ひどくはねつけられ、そうしてそれっきりであった。
相手はどこかへ消えうせたのである」</p>画面が切り替わりますので、しばらくお待ち下さい。
※ご購入は、楽天kobo商品ページからお願いします。
※切り替わらない場合は、こちら をクリックして下さい。
※このページからは注文できません。
- 商品価格:99円
- レビュー件数:0件
- レビュー平均:0(5点満点)